ENDLESS LOVE

そろそろ寝ようかと思ってパジャマに着替えてる途中に電話が鳴った。
この着信音に設定してるのはただひとり、舞美ちゃんだけ。
すぐにテーブルの上にある携帯に手を伸ばしたけれど、上半身裸状態だという事にふと気がついた。
気がついてしまうと見えないのに何だか恥ずかしくて、慌ててパジャマを羽織って電話に出た。

「愛理ー。」
「ま、舞美ちゃんっ。」
「ん?何か・・・してた?」

慌てて電話に出たのが雰囲気で伝わったのか、舞美ちゃんがちょっと怪訝な声で私の様子を窺う。
しょんぼり 从´・ゥ・从 な舞美ちゃんを想像するとかわいいけどかわいそうな気持ちになって、頬が緩んだ。

「今、着替えてたの。」
「・・・きききききき着替え!?」

思った通りのリアクションが愛おしくて思わず笑ってしまう。
電話の向こうであわわわって声がする。
いつまで経ってもこんなに純粋で素直な人がいるだろうか。そんな舞美ちゃんだから愛おしくて胸の奥がやんわりと温かい。

「あの、今・・・裸・・・?」
「ううん。ちゃんと着替え終わってから電話に出たよ。」
「あ・・・そう・・・。」

ちょっと残念そうなのも正直でかわいい。

「で、どうしたの?」
「あ、今からちょっと公園に来れないかな?って思ったんだけど・・・こんな時間だしもう寝るよね。ごめんね。」
「どうしたの?何かあった?」
「ううん・・・ただ顔が見たくて・・・。」

自分が呼び出す事は多々あった。だけど舞美ちゃんがこうしてしかもこんな時間に呼び出すなんて珍しい、というかどうしたんだろう。
顔が見たいっていうのはきっと嘘じゃないだろう、だけど。

時計を見る。まだ23時過ぎ。

「公園でいい?」
「愛理・・・来てくれるの?」
「うん。入り口で待っててくれる?」
「うんっ!」

元気いっぱいで返事をする舞美ちゃんがかわいかったから、バレないように笑って電話を切った。
適当に服を着替えて携帯だけ持って家を飛び出した。

いつもの近道じゃなくて明るい道を通って公園に着くと、そこにはすでに舞美ちゃんの姿があった。
暗くてもシルエットでわかる体のライン。ホントに綺麗だと思う。
すらりと伸びた手足に無駄がなくて、細いのに意外と力があって頼もしくもある。
私の足音に気がついて振り向いた舞美ちゃんが手をぶんぶんと振る。近づいて見る顔は綺麗で今でも見惚れてしまう程。

「こんな時間にごめんね。」

申し訳なさそうな顔をさせたくないから笑顔で答える。私だって同じように会いたかったからここに来たっていう事を知って欲しかったから。
向かい合って手を握る。私と舞美ちゃんの間でゆらゆら揺れる腕。わざと大きな動きで振るとやっと舞美ちゃんが笑った。

入口から近いベンチに座ると、いっきに騒音が静まった。
暗いからちょっとだけ怖くて舞美ちゃんにぴったりくっつくと、舞美ちゃんが肩をぐいっと抱き寄せてくれた。
暑いのに体温が心地よくて安心する。

「えへへ。」

嬉しくて甘えるように舞美ちゃんにさらにくっつくと、照れて顔を真っ赤にしている。
かわいいなぁ。頬をつっつくとさらにその顔は赤くなった。

「愛理っ。」
「舞美ちゃん、かわいい。」

頬に一瞬だけのキスをする。と、舞美ちゃんにぎゅうっと抱きしめられた。
それは苦しいくらい力の入った抱擁だった。

「舞美、ちゃん?」
「愛理、好き。」

消え入りそうな声で囁かれる。その声の音色は刹那を含んでいた。

「舞美ちゃん、好きだよ。」

だから真っ直ぐに嘘偽りなくホントの気持ちを伝えた。

「ありがとう。元気出たよ。」
「ホント?」
「ちょっと勉強に行き詰ってて・・・愛理に会いたかったの。ありがとう。」

舞美ちゃんの笑顔がいつもの笑顔で安心していると急に抱きしめられていた腕が私から離れた。
名残惜しく思っていると舞美ちゃんが突然大きく息を吸い込んだ。

「愛理ー!大好きー!!」
「ちょ!」

大声で叫ばれた愛の言葉。
嬉しい気持ちと恥ずかしい気持ちで頭の中が軽いパニック。
舞美ちゃんといるといつもこんな感じで、予想外な事も多くてでもだから毎日楽しい。
もっともっと知りたくて知るともっともっと好きになる。

「そんな大きな声で・・・!」
「大丈夫!誰も聞いてないよ。」

確かに周りには誰もいないし、普段そんなに大きな声で好きだなんて言われる事もない。
だから嬉しさの方が勝ってしまって、そんな行動をする舞美ちゃんが年上なのに子供みたい、だなんて言ったら怒っちゃうかな。
でもそういうところ、大好きだよ。

「そろそろ、帰ろうか。」

舞美ちゃんが手を伸ばして私の手を握る。当たり前のように繋がれた手が嬉しい。
ぴったりと何の違和感もなく繋がる手から伝わるぬくもりがひどく愛おしかった。



次の日、あの大声を桃に聞かれていた舞美ちゃんが一日中からかわれた事など知らずに、私は昨日の余韻に浸っていた。



END