ENDLESS LOVE



舞美ちゃんは社会人になり、私は大学生になった。
私達の関係と言えば特別変わった事もなく、ただちょっとだけ会える時間がなくなった。
それはお互いの生活が忙しくなってしまったからだけど、それでもなるべく会うようにしていた。
やっぱり電話より会って顔を見た方が心が落ち着くからだ。

◇◇◇

平日めずらしく、舞美ちゃんから会いたいと連絡があった。
めずらしいけれど不自然なわけではなく、舞美ちゃんの仕事が終わる時間に焼き肉デートをする事になった。
時間があったから早く着いて待ち合わせ場所で待っていると、舞美ちゃんが大きく手を振って現れた。
時間より早く着てるのに私が先にいたからか「遅れてごめんね!」って息を切らして言う舞美ちゃんが相変わらずで愛が溢れる。
ここ最近の近状を話しつつ食べる美味しいお肉に頬が緩む。

「あ、あのね。」

もう満腹ー!なんて言ってふたりでお腹をさすっていた時だった。
舞美ちゃんが嬉しそうに私に笑いかけた。

「あのね、一人暮らし、する事にしたんだ!」

ここ1年くらいずっと一人暮らししたいと言っていたのをもちろん知っていた。
だけど社会人の一人暮らしっていうとどうしても・・・同僚が泊まりに来たり家で飲み会したり・・・そんなイメージが強くて。
だからその話題が出ると嬉しそうに笑う舞美ちゃんと反比例して苦笑いする自分がいた。
私の舞美ちゃんが取られちゃうんじゃないかっていう勝手な考えは考えれば考える程自分では抑えられないところまで来ていたのだ。
何年も付き合ってお互いを知ってそれでいてもなおこんな考えを持ってしまう自分の自己嫌悪と戦っていた。

「そっか。」

だから気のない返事しか出来なかった。ついにこの時が来てしまったんだと。
それでも舞美ちゃんは嬉しそうに言葉を繋げる。

「住むところね、今より愛理の家が近いんだぁ。」
「えっ?」
「だからね・・・愛理ともっと会えるかなって思って・・・ほら大学があっても泊まったり出来るかなって。」

最後の方は恥ずかしいのか早口だった。だけど一語一句聞き取るとそんな事を考えてくれていたとは思わず、何かが込み上げてくる。
本当に。バカみたいに優しくて私の事を考えてくれる人。知っているのにどうして私はこんな醜い考えを持っていたのだろう。

「愛理に合鍵・・・渡してもいい?」

いつも私に笑いかける笑顔でだけどちょっと不安そうに真っ直ぐ私の顔を見て言われた言葉に、その意味を知る。
ゆっくりと頷くと途端にぱーっと笑顔になる舞美ちゃんが愛おしくて仕方がない。
抱きしめたくて触れたい衝動が押し寄せてくる。

「えへへ。嬉しいな。」

舞美ちゃんはそう言って箸を持っていた私の手を握る。
手のひらも指先も愛おしそうに触れる舞美ちゃんに欲情する。
持っていた箸は音を立てて落ちた。それに舞美ちゃんが驚いて手を離そうとするから強く握った。
驚いて私の顔を見る舞美ちゃんの顔を真っ直ぐに見つめると、何かを感じた舞美ちゃんはまた優しく微笑むのだ。

「したくなっちゃった。」

そう言うと舞美ちゃんの顔は一気に赤くなる。
だけど今日は出来るはずもなく、その代わりに指先に口づけを。
もっとしたくなる気持ちを抑えてそっと唇を離すと舞美ちゃんは深い息を吐いた。

「もっとして欲しい?」

意地悪な言葉に舞美ちゃんはそれでも恥じらいを持ったまま微笑み頷くのだ。

「今度の休み、会えるかな?」

その言葉に手帳を見て嬉しそうに頷く舞美ちゃんにいつだって恋をするんだ。
きっとこの先もずっと。永遠なんて安っぽい言葉を信じてはいないけれど。



END