ENDLESS LOVE

自分の空間に舞美ちゃんがいる事が現実味がないように思えたけど、実際私の部屋に舞美ちゃんがいる。
いつもいる自分の部屋を見られる事が嬉しくもあり、恥ずかしくもあった。
舞美ちゃんは部屋をゆっくり一周しながらあちこち見たり、時に何かに触ったりしている。
その動きを黙って目で追う。

「愛理の部屋、かわいいね。なんか女の子らしくて。」

部屋を一周し終えた舞美ちゃんが私の方を振り返って笑う。

「そうかな?」
「うん。かわいい。」

部屋の事を言われてるのはわかっているけど、妙に照れてしまう。
そんな私に気がついたのか舞美ちゃんは笑って私の元に近づく。
そして、ちょっと戸惑った声で「抱きしめても、いい?」って聞く。
それがもどかしくって、自分から舞美ちゃんの腕の中に入ると少し熱いくらいの体温に触れた。
同時ににおいが、まるで体中に染み渡るように入り込んできた。
おずおずと回された手が、少しずつ力を増す。私も同じように力を増すと、もっと濃く舞美ちゃんを近くに感じた。

「舞美ちゃん、あったかいね。」
「愛理もあったかいよ。」

触れ合う事がこんなに心地よくて気持ちのいい事だと知らなかった。
胸の奥から溢れ出る何かが、もっともっと舞美ちゃんを欲する。
少し体を離して舞美ちゃんの顔を見た。真っ赤に染まった頬がかわいい。
首のあたりの服を少し引っ張ると、舞美ちゃんの顔がすぐそばまで近づく。
自然にお互いの目が閉じられた。
すぐに唇に温かくて柔らかい感触が降ってきた。その感触は告白の日以来、だった。

あれから私の心はすぐに舞美ちゃんでいっぱいになっていった。
もっと知りたくてもっと近づきたくてもっと触れたくて。
少し前の自分にはなかった感情はもう歯止めが利かなくなっていた。

唇が離れると、舞美ちゃんが恥ずかしさを誤魔化すように「えへへ。」って笑った。
私も同じように笑って、顔を首筋に埋めた。
少し汗ばんだ首筋に唇を当てた。それは無意識で。
その瞬間に舞美ちゃんの体が震えたのを感じて、自分が何をしたのかを知った。
以前に、指を絡めた時に感じた衝動にとても似ていた。というか多分同じで、あの時すでに私は舞美ちゃんを好きだったんだと気がついた。

もう1度、舞美ちゃんの首筋に唇を当てた。今度は意識的に。
舌を這わせると、舞美ちゃんから色づいた息が漏れた。

「あ、愛理っ。」

体を離されるのが嫌で、思い切り力を込めて抱きしめたら抵抗がなくなった。
今度は噛みつくように首筋に触れると、私の耳元にあった舞美ちゃんの唇から今度は声が漏れた。
自分の中に生まれた欲望が何かわかって一瞬戸惑う。

体を離して舞美ちゃんの顔を見ると、今まで見た事のない表情をしていた。
それは綺麗で切なげで、それでいて妖艶にも見えた。

してみたい、と思った。

舞美ちゃんの首に腕を回して引き寄せて、ゆっくりと唇を合わせた。
何度触れても気持ちがよくてずっとこうして触れていたいくらいだ。
ホンの少しだけお互い熱くなったカラダは自然に湿った声を唇の間から漏らす。

---その時だった。

ぐぅ、と場違いな音がふたりの間に流れた。
私のお腹の音だ、と気がついてすぐに唇を離した。
今までしていた行為の恥ずかしさと、お腹が鳴った恥ずかしさで舞美ちゃんの顔が見れない。
そんな私の頬を、舞美ちゃんは両手でまるで壊れ物を扱うみたいに優しく包み込んで、顔を上げさせた。
舞美ちゃんがすごく愛おしそうに微笑むその瞳に吸い込まれそうになる。

「お腹、すいた?」
「・・・ちょっと、だけ。」
「愛理、かわいい。」
「かわいく、ないよ。」

そう言い終わると同時に降ってきた唇に、私は再び目を閉じた。
舞美ちゃんが好きで・・・胸の奥がぎゅうって痛んだ。
切なさも幸せも含んだその痛みが嬉しくて、涙が出そうだ。

舞美ちゃんも同じ気持ちでいてくれたらいいと思う。
触れている唇にその想いを乗せて、一層力を込めて抱きしめ合った。



END