ENDLESS LOVE

恥ずかしながら、初めてこういう事をする事を思い浮かべた事がないわけじゃなかった。
その想像と今のこの現状は全然違っていた。朝からこんな・・・とは思ってもいなかった。
気持ちがいいくらい明るくて、健全とした清々しい光に照らされている中、私は舞美ちゃんを抱き寄せて布団の中に潜り込んだ。

ぎゅっと抱きしめ合っているだけなのに、いつもと違う気がするのはベッドの中だからなんだろうか。
いつもだってドキドキするけど、それ以上にドキドキして心が浮わついている。
目が合うと、いつも以上に恥ずかしそうに目を細めて笑う舞美ちゃんがいた。

「なんか恥ずかしい。」

そう言って甘えるように私の胸の中に顔を埋めてわしゃわしゃしてる。
犬みたいでかわいくて、だけど愛おしい仕種に心が奪われる。だってすでに胸元にかかる舞美ちゃんの息が熱く色づいている、から。
目の前に見えるつむじに唇を当てるとそれを待っていたかのように、舞美ちゃんのカラダが少しだけ硬直したのがわかった。
そのままおでこに移動して唇を這わせると、上目遣いの舞美ちゃんと目が合った。そんな目で見られると理性は何処かへすぐに吹き飛んでしまう。

顔を下ろして唇で唇を探すように。そうしているとじれったそうに舞美ちゃんから唇を合わせてきた。
今度は自分のカラダが硬直する番だった。硬直というより電気が走ったという表現の方が合っているかもしれない。
その電気は性的な快楽的な。だけどそれだけではなくてその中に舞美ちゃんへの想いも含まれていた。
だから夢中になって唇を合わせて柔らかくて甘い感触を味わう。
そのうちにお互い湿った声が漏れ出す。お互いの声さえも塞いで。

「愛、理っ」

いつも呼ばれるのとは全く異なる音で呼ばれて、唇を離すと目を泳がせた不安そうな表情が見え隠れする。

「舞美ちゃん?」
「私で、いいの?」

何を言っているんだろうと思って、反応が遅れた私の思考を塞ぐ。

「初めてだし・・・いいの?」

遅れてその言葉の意味を理解して、自分のカラダの熱が簡単に上がった。

「嬉しい。」

そう言われたのが予想外みたいな反応をされたから、私は舞美ちゃんのおでこにそっと口づけた。
それから、強いくらいの力でぎゅっと抱きしめた。

「かっこいい舞美ちゃんもかっこわるい舞美ちゃんも好き。舞美ちゃんが好き。」

あんなにモテてたのに実は誰とも付き合った事ない事も、そういうのにすごく不器用で奥手なのも、知ってる。
それが自分への想いの為だったなんて。そんな事実がたまらなく嬉しくて愛おしさが刹那を含む。
そして、私とこれからそうなる事で、少しでも舞美ちゃんの人間不信とかそういうところが消えていけばいいと思う。
私の想いもまた深いんだと、触れ合い感じ合う事でもっとわからせてあげたかった。

舞美ちゃんに跨って見下ろすと、全てが私に委ねられた気がした。
誘うように舞美ちゃんの細くて長い腕が伸びてきて引き寄せられ、ゆっくりと重なった唇は少し荒くだけど丁寧だった。
舌を追いかけるとおずおずと絡まってきた、その初めての感触に夢中になる。もっともっと欲しくなる。
そう思うと丁寧に触れ合う事が出来なくなり、欲望が渦巻き荒さと愛おしさが増す。
唇は合わせたままで。手で頬に触れると驚くほど熱かった。そのまま撫でるようにずらして耳に触れると、舞美ちゃんのカラダが揺れた。
私と触れ合う事でそうなっている事が嬉しくて幸せだ。
唇を離すと、足りなそうな顔で見上げられてそれが余計にそそられる。
さっき手で触れたように今度は唇で頬に触れ、そのまま耳に触れるとさっきよりも大きな反応があった。
耳たぶを唇で軽く噛むと、我慢できずに声のような息が漏れた。
そんなひとつひとつ、全てを見逃したくなくて、腕の中に収めるようにカラダで舞美ちゃんを包み込んだ。

徐々に暑さが増してきたのは、窓から差し込む太陽の熱が強くなったからではなかった。

唇を合わせたまま、舞美ちゃんのカラダの上に手を伸ばした。
Tシャツの上からでもこうして触るのは初めてで、気持ちが高まり今まで感じた事のない感情が心を占めていく。
するりと腰のあたりまで手を滑らせ、Tシャツの中に手を入れると湿った肌を直に感じる。
思わず息が漏れた。舞美ちゃんの顔が切なげに苦しそうに歪む。
お腹をゆっくりと撫でると、舞美ちゃんからもまた声が漏れた。
無駄がなく引き締まっているそれを見たい衝動をぐっと抑えて、さらに上に手を滑らすと膨らみに出会う。
少し触れただけでさっきとは違う柔らかい感触が指先に伝わり、少し遅れて脳に届く。
舞美ちゃんのカラダに力が入り震えた。そのまま表情を見ると閉じていた目が開かれた。

「舞美ちゃん。好き。」

そう告げた自分の声の甘さに驚いた。それで自分も感じている事を知った。
恥ずかしく思ったけれど、でもそれはホントの気持ちだから舞美ちゃんに届けたかった。

「私も、好き。」

そう言う舞美ちゃんの声も、溶けてしまうんじゃないかと思うくらい格段に甘い。
それが自分にだけ向けられ、自分にだけ与えられる声だという事が嬉しくて頬が緩んだ。
すると舞美ちゃんの表情も和らぎ、優しく穏やかに微笑んだ。
頬に軽く唇を当ててから、そのまま止まっていた手を動かして胸の上にそっと手を置いた。
それだけで舞美ちゃんのカラダは揺れ、呼吸が乱れる。
その先端に人差し指を当て、こするように触れると舞美ちゃんの口から思わず声が漏れる。
その声がもっと聞きたくて、そのまま触れ続けているとそこは固くなり舞美ちゃんの腰が遠慮がちにもぞもぞと動き出した。
呼吸はさらに乱れて、ふたりきりの空間に響く。
我慢できなくて、Tシャツをめくり上げると理解したのか舞美ちゃんが恥ずかしそうに腕を動かしたからそのまま脱がせた。
下着を外すためにカラダを密着させて腕を背中に回すと、肌がさっきより汗ばんでいた。
ホックを外してそれを取ると、恥ずかしいのか視線を逸らして腕で隠す姿がまたそそる。自分がとても興奮しているのがわかる。
腕に口づけて、あわらになった肩を撫でる事で力が緩まった腕をゆっくりと外すと、思っていたよりもずっと、綺麗なカラダが目の前に見えてたまらなくなる。
顔を降ろして膨らみを口に含むと、一段階高い声が聞こえてきた。
舌でじっくりと味わっていると、さっきまで控えめに揺れていた腰が大きく動き出し時々背中を反らせる。
片方の胸に手で触れ、唇でカラダを辿るように下に降ろして行くと、引き締まったお腹に辿り着いた。
ぺろり、と舐めるとくすぐったそうにしたその動きで腹筋が少し浮き出る。その筋肉の美しさに感動する。

触れれば触れる程、私の中の感情が大きくなり好きが強くなっていく。
愛しい人と愛しい行為に溺れる事がこんなにも強く胸の奥の衝動を突き動かしていく。
もっともっと舞美ちゃんのカラダにも心にも触れたい。
舞美ちゃんを想うといろいろな感情が心を突き動かすけど、根源はただひとつ。舞美ちゃんが好きだという、その気持ち。
それがとても嬉しくて涙が出そうだ。
だからもう止まれない。舞美ちゃんにも止まって欲しくない。

「脱がせてもいい?」

耳元で囁くと、少し触れた耳が熱かった。
頬と頬とくっつけると自分も同じくらい熱くなっているのがわかってそれが嬉しい。
私の言葉にゆっくりと頷いてくれたから、手をかけると舞美ちゃんの手が私の手の上に添えられた。
顔をこれ以上ないってくらい真っ赤にさせて私を見る目が潤んでいる。

「嫌?」

そうではないのをわかってて聞く私もちょっと意地が悪いと思ったけれど。

「嫌、じゃない。」

息を乱しながら、やっと言葉を発した舞美ちゃんをめちゃくちゃにしたいと思う。だけどとても大事にしたいと思う。
安心させてあげたくて微笑んで見せると、つられて目を細めて微笑んでくれる。
添えられた手に口づけてそのまま脱がせて、ぎゅっと抱きしめた。
だけどすぐに私が離れると、無意識だろう寂しそうな顔をする。
舞美ちゃんに跨ったまま、カラダを起こしてパジャマを脱いだ。
下から裸を見られてるのが恥ずかしいと思うけれど、見て欲しい気持ちもあった。
舞美ちゃんは予想外だったのか驚いた表情のまま私を見ていた。
早く直に触れ合いたくて、カラダを下ろして舞美ちゃんのカラダに重ねた。
汗でお互いの肌が張り付く。熱いくらいの熱がまとわりつく。その熱にもっとうなされたくって、背中に腕を回して引き寄せた。
舞美ちゃんの匂いが濃く届く。その匂いが体中に広がってくらくらした。
カラダの線を味わうようにゆっくりと手を下ろしていくと私の手の行き先を知って舞美ちゃんの息が乱れ、カラダを密着させるように私を引き寄せてきた。
目は潤み、視線を逸らす。

「舞美ちゃん。」

自分の声もまたかすれていた。

「愛、理。」

名前を呼び合う事がこんなに愛おしい事だったなんて。
気持ちがたくさん詰まって愛しい人の名を呼ぶ。好きとか愛してるとか愛おしいとかそういう気持ち全部を乗せて。
心の中がどうにかなってしまいそうだった。溢れて溢れて止まないこの気持ちをなんて伝えたらいいんだろう。

そのまま、舞美ちゃんの顔を見つめながらゆっくりと舞美ちゃんのそこに触れた。

「んっ。」

我慢できずに漏れた声は唇で塞いで自分の中に閉じ込めた。
ぬるりとした感触が指先を伝って届く。そうしたらもう止まれない。
すくい取るように動かすと、舞美ちゃんのカラダの動きが大きくなっていく。
もどかしそうに切なげに腰を揺らして私を求めてくれているのがたまらなく嬉しい。
そんな姿を自分だけが独占出来ると思ったら、もう舞美ちゃんの事しか考えれなかった。
少し上にずらして膨らんだそこに触れた時、今までで一番大きな反応があった。

「愛理っ。」

背中に回されていた手に力が入ったのがわかって、指を数回動かすと私の動きに合わせて腰が揺れた。
その動きは思っていたよりもずっと妖艶でそれでいて見とれてしまう程、綺麗だった。
舞美ちゃんから動きに合わせたように声とも言えない息が漏れ、私もまた息が早くなる。
指の動きを速めると同じように舞美ちゃんの動きも速まる。
限界が近いのか、余裕がなくなって今のこの行為の事しか考えられないだろう舞美ちゃんの表情を見るとたまらない。

「舞美ちゃん、好き。」

最上級の想いを込めて。
そう呟いた言葉に舞美ちゃんが頷いて、伏せられた目が一瞬開いて微笑んだように見えた。
ときめくってこういう事を言うんだろうか。何度でも舞美ちゃんに恋をするんだろうと思った。これから先も。

大きくカラダを反らせ、私にしがみついて熱を放出した舞美ちゃんを私は大事に大事に、抱きしめた。



END