ファインダー越しの君 --カシャッ。 シャッターを切る瞬間が好きだ。ファインダー越しに映る景色は一瞬のもので思った通りだったり意外だったりそんなわくわく感が好きだ。 景色、メンバー。いろいろ撮っていると楽しくて仕方ない。 夢中になって写真を撮っているといつの間にかリーダーに見られていたようで、目が合うと目を細めてリーダーが微笑む。 「なっきぃ、たまには自分も映ったら?」 「あ、うん。」 リーダーはこういうところ気が効くと思う。 きっと撮ってばっかりじゃ私のカメラに私が写らなくてとかきっとそんな風に思ってくれたんだろう。 その優しさに甘えて首からぶら下げていたカメラを手渡して、辺りにいたメンバーの輪の中に入る。 隣に熊井ちゃんがいて「なっきぃおいで!」って嬉しそうに私を呼ぶ。 その久しぶりの感覚に心がじんわりと電気のような切なさに包み込まれた。 「撮るよー!はいチー・・・チー・・・あれ?なっきぃ?」 私と熊井ちゃん含めて数人、アイドル全開の表情で固まったまま、ついには端にいた千奈美ちゃんが我慢できずに吹き出した。 「ちょっと舞美ー!何やってるの!?」 「え、これどうやって撮るの?これでいいんだよね?あれ??」 気を取られて気づかなかった自分が悔しい。リーダーはクラッシャー矢島じゃないか。 すぐに駆け寄ってカメラを奪うとリーダーが申し訳なさそうに苦笑いする。 「ここ押すんだっけ?」 「ああもう大丈夫!撮ってあげるからリーダーあっち行って!」 「でも・・・。」 「いいからほら!」 背中を押すとちょっと困ったような顔してリーダーが私がいたところに、熊井ちゃんの横に行く。 カシャッ。軽快な音がいつもより響いて聞こえた気がした。 部屋に戻って今日撮った写真を見返すと綺麗なフランスの街並み、メンバーの楽しそうな表情に自然と笑みが漏れる。 そして最後に撮った自分が写るはずだった写真。リーダーの肩を抱いて笑ってる熊井ちゃん。 本当は自分がいたはずだった、でもリーダーが悪いわけじゃない。 少しだけ、切ない。 次の日は仕事で忙しくでも楽しい時間が続く。その合間に休憩があってそれぞれお茶を飲んだり雑談したりしていた。 そんな様子も撮ろうとカメラを取り出した時。 「なっきぃ。」 熊井ちゃんが汗を拭きながら私の事を呼ぶ。 その瞬間を思わずパシャリ、熊井ちゃんがファインダー越しに驚く。 「へへ、撮っちゃった。」 「もう、今のうち汗やばいよ!」 「じゃあもう一回!」 ファインダーを覗き込むと、一生懸命汗拭いて「これでいいかな?」ってカメラ目線。 直接目が合っていないむしろ熊井ちゃんからは私の目は見えない。 私だけが熊井ちゃんと目が合っていて、何故か秘め事のような気持ちになって思わずそのまま見つめ続ける。 「なっきぃ?」 「あっ。」 カシャッ。 声をかけられて我に返って焦って撮っちゃった写真。 なかなかシャッターを切らない私を不思議そうに見つめている熊井ちゃんの姿が写る。 「うち変な顔してるー!消して!」 「そうかな?」 「もう一回!」 もう一度、撮ろうとした時「そろそろ時間です」とスタッフの声が響いてタイミング悪く休憩は終わりになってしまった。 結局一緒に写真は撮れなかったけどファインダー越しの熊井ちゃんは熊井ちゃんで、何度見ても幸せな気持ちになれちゃう。 今度は一緒に写真撮ろうね。それまでにリーダーに使い方教えなきゃ・・・いや、やっぱ千奈美ちゃんにお願いしよっと。 END |
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