コアリズム・・・?

「あんた、いつしてるわけ?コアリズム。」
「いつって。この前、亜弥ちゃんの前でしてみせたじゃん。」
「はぁ?見た事ないし。」



--っていうか、誰と勘違いしてるわけ?

誰か家に呼んだ・・・っていうのも正直ムカつく。
けど・・・まぁしょうがないよね。私も友達とか呼ぶし。
でも!ソイツと私を間違えるなんて、ホントにマジムカつく。
私を誰だと思ってんの。アンタの彼女じゃん?
そんな私とそこらへんのヤツと間違えるとは、いい根性してんじゃん。

そんな私の思いなど知らず、たんはへらへらと笑いながら、ソファーに寝そべってテレビを見てる。
時々、緩んだ顔で欠伸をしたりして。

--おもしろくない。

テーブルの上に乗っていたリモコンを取り上げると、テレビの電源を落としてやった。



「ちょ、亜弥ちゃん。美貴、見てたんだけど。」
「つーかさ、見たことないんだけど。」
「だから、この前見せたって言ってるじゃん。」
「アンタ、誰と間違えてるのさ。」
「間違えてないし。っていうか、何でそんなに怒ってるの?」



--嫉妬。



「別に怒ってないし。」
「ウソつけー。」



そう言って、たんがにやりと笑った。

--瞬間。

今まで枕にしてたクッションが私の顔面に飛んできた・・・って、あぶなっ・・・。
と、思った時には、反射的にそれをキャッチしていて、間髪いれずにたんに投げ返していた。



「うげっ・・・。」



見事、顔面的中。
たんの顔が仰け反った。

ざまーみろ。



「痛いよぉ・・・。亜弥ちゃん、本気じゃん・・・。」



悪いのはたんだからね。
だいたい、私と誰かを間違えて、尚且つそれに気がつかないたんが悪い。

私はさっきたんがしてみせたように、にやりと笑ってみせた。
そしたらたんは、しょんぼりした顔でクッション抱えてる。

それがなんだか仔犬みたいで、なんだか可愛そうになっちゃって。
ああ、私はたんに甘いなーって、わかってて嬉しくて、しょーがないなぁって、大袈裟に痛がってる頬に触れた。



「痛いの痛いの、飛んでけー。」
「亜弥ちゃん、美貴の事バカにしてんじゃん。」
「してないって。」



愛おしいと、思ってる。
わかってるくせに。

だから、さっきだってあんなに怒ったのに。

でも、もうあの時のムカつきはなくなっていた。
別に浮気してたわけじゃないし、それに前に道重ちゃんから聞いた事を思い出したから。

『藤本さん、誰に何話したかわかんなくなっちゃうみたいで、同じ話を何度も聞かされる事があるんですよ。』

たん、バカだなー。って、おかしかったのを思い出して。
でも私だったら前に聞いたからとか言っちゃうよーって言ったら、道重ちゃんは聞いてないフリして聞いてあげるんですって言ってて。
道重ちゃんも大変だねぇ、なんて言ってたのを思い出して。

そこに、たんの悪気があるわけじゃなくて。

嫉妬しちゃうなんて、余裕ないなぁ・・・。


クッションを大事に抱えて頑なに離さない、たんの顔だけをこっちに向かせて。
頬に、唇で触れた。
少し、たんの体が緩んで。
今度は唇に触れて、クッションをたんの手から離して。
腕の中に包み込んだ。



「たん、ごめんね。」
「亜弥ちゃ・・・。」



私をもっと求めてよ、言わない代わりに再びたんの唇に触れた。






私の腕の中で、たんが息を切らしている。
慣れる事なんてなく、何度しても足りない。
たんの髪を梳かすように撫でると、気持ちよさそうに目を細めた。



「それにしてもさー・・・。なんかさ、最近激しいよね・・・。」
「だって・・・ほら、コアリズム。」
「はぁ?」
「これが美貴流のコアリズム。ね、この前も見せたでしょ。」



嬉しそうに、にやけて言うたんに、私はやられたと思って・・・。
やけに乱れた腰つきを思い出した。
自分の顔が赤くなるのがわかって・・・あー、悔しいけど・・・。

全てがわかって、私はたんのデコを叩いた。



「痛っ・・・。」
「アンタ・・・バカだわ、ホント。」



そう言われても、幸せそうに笑うから。
愛おしいその体を強く抱きしめた。
また欲しくなって、私は美貴の腰に手を伸ばした。



「じゃあ、もう一度しようか。コアリズム。」
「美貴はもういいよ。次は亜弥ちゃんね。」



--体勢逆転。

私を見下して、にやりと笑うたん。
ああ、なんていうか。悔しいけど今回はたんにやられたわ・・・。

私はそのままたんに全てを委ねて、そして・・・。



END