真面目な君の横顔と不真面目な君のからだ

舞美ちゃんが息を整えている。整え終わると恥ずかしそうに赤らめたままの顔を背ける。
背けられた舞美ちゃんの頬を両手でつつんで私の方を向かせる。そうするとくすぐったそうに、でも幸せそうに笑ってくれる。
いつもそうだから、いつも新鮮な気持ちになれる。
いつまで経っても慣れずに恥ずかしく幸せに思ってくれる、そんな舞美ちゃんの気持ちが私を同じ気持ちにさせてくれる。

頭を撫でてあげると汗がすごくて、思えばもう夏も近い。
行為のせいで湿度が増した部屋は、熱が籠って暑くて熱い。触れた頬もまた熱い。

甘えるように私の腕の中に入ってきた舞美ちゃんのカラダを受け止めると、幸せそうに笑ってくれてそれがホントだと伝わる事が幸せで怖くなる。
そのまままったりしようと思ったら、静かな部屋に携帯の着信音が響いた。
舞美ちゃんは私の腕の中から抜け出して携帯を手に取った。
急に熱すぎる程の熱がなくなって腕が寂しくなって、携帯を見てる舞美ちゃんの背中をぎゅっと抱きしめた。
背中に頬をくっつけていると、舞美ちゃんが笑っているのか振動が響いた。
一緒に居るのに誰かに邪魔されてる気分になって、足も腕も絡めてさらに引き寄せて抱きしめると、それに気がついた舞美ちゃんが首だけでこっちを向いた。

「愛理?」
「やだ。今はこっち見て。」

無理矢理カラダをこっちに向かせると、困ったように笑う舞美ちゃんと目が合う。
こんな我儘な私をめんどくさいと思ってないだろうか、とか思ってしまって何だか後ろめたいような気持ちにさせる。
舞美ちゃんは誰にでも優しいから・・・。
だけど目が合った後にぎゅっとしっかりと抱きしめてくれて、頭をそっと撫でられて。
そのしぐさが全て愛情に包まれているから、余計に。
きっとわかってるんだろうな、だけどわかってないんだろうな。それが舞美ちゃんの困ったところであり、魅力でもあるんだけど。

「今ね、なっきぃからメールが来たんだ。」

何も隠す事無く言っちゃうのもまた、舞美ちゃんらしい。

「最近ね、なっきぃから写メがよく届くの。」
「写メ?」

私と舞美ちゃんの間に携帯がある。舞美ちゃんはそれを慣れた手つきで操作して、私に画面を突き付ける。

「・・・なっ、なにこれっ!?」
「なっきぃ、かわいい下着買ったんだって。」

画面に写し出されていたのは、なんとなっきぃの下着。
無駄に・・・と言ったら失礼だけど、無駄にセクスィーなすけすけの下着。
こんなの舞美ちゃんに送るなんて・・・。

「なっきぃかわいいよね。」

え?何が?舞美ちゃん嬉しいの?なんでそんなにこにこしちゃってるの!?
ホント舞美ちゃんはたらしだし・・・だいたい恋人以外の下着見てにこにこしてるとかおかしいじゃない。
っていうかこんなありがちなセクスィー下着が好みなの、かな・・・。自分が身につけているものとは明らかにセクスィー度が違いすぎる。

「毎日写メ来るんだよね、最近。」

そう言って次に見せられたのは、なっきぃの姿。一見普通の自分撮りに見える。
だけどよく見ると・・・谷間がさりげなく強調されている・・・ように見える。
それに舞美ちゃんが気づいているかと言えば、きっと気づいてないんだろうけど。

・・・っていうかなっきぃ!!私の知らないところで何してるの!!

私は舞美ちゃんの携帯を取り上げて、画像を保存してるフォルダを開いた。
フォルダにはさらに℃-uteという名のフォルダがあり、開くとメンバーの名前がついたフォルダがあった。
『なっきぃ』というフォルダを開くと、その数の多さに圧倒された。
送られてきたメールの画像をちゃんときっちり保存してるのがまた舞美ちゃんらしい、けれど。
その画像の中にはさっきみたいなきわどいものもあったりして・・・。
ついでに『あいり』というフォルダを開いてみると・・・少ないわけじゃないけれどなっきぃほど多くはなかった。
負けたくない。そんな気持ちが胸の奥から湧き上がる。というか勝ち負けなんだろうか。だって舞美ちゃんは私のだ。

「愛理?」

黙って真剣に携帯を見てたからだろう、舞美ちゃんが窺うように私の名前を呼んだ。
ハッとして我に返る。べ、別になっきぃのセクスィー下着に釘付けになってたわけじゃないんだから!

「舞美ちゃんっ!」
「・・・はっ、はいっ!」

ちょっと声が大きくなってしまって、びっくりした舞美ちゃんが面くらったみたいに同じく声を大きくして返事をした。
かわいくて意地悪したくなる。

「なっきぃから写メもらって嬉しい?」
「うん。」
「私から写メもらったら嬉しい?」
「うんっ!」

返事のトーンが違う事に嬉しさを感じる。

「じゃあ、私も下着の写メ送ろうかな・・・。」
「へぇっ!?」

相当驚いたのか、目を大きく見開いてぱちくりと瞬きをしてる。

「イヤ?」
「そ、そんな事ないけど・・・。」
「けど?」

そう言った瞬間、舞美ちゃんの顔が赤らんで・・・あれ、なんだか異常に赤い。

「ま、舞美ちゃんっ!!鼻血っ!!!」
「えっ?あ・・・。」

慌ててそばにあったティッシュを何枚かすばやく取って、舞美ちゃんの鼻に押し付けた。
「あぅぅ。」なんて情けない声を出してる舞美ちゃんが愛しいとか、悔しい。でも嬉しい。

「何考えてたの!?」
「・・・愛理の下着の事。」

・・・これって愛情の深さなのかな。

なっきぃの時はこんなんじゃなかったわけだし、私の下着想像して鼻血出しちゃうって・・・ほら、そういう事だし。
っていうか、私の下着を見たり触ったり脱がしたり・・・してるくせに。
そういうところ、純粋っていうかなんて言うか。
申し訳なさそうに鼻にティッシュ当てたマヌケな姿で「ごめんなさい。」って呟いたりしちゃって。
それがどうしようもなくかわいいって、ホントどうしようもなくって笑っちゃう。
こんな事に気を取られてしまった自分を反省したくなる。ごめんね、舞美ちゃん。

手を伸ばして新しいティッシュを当ててあげようとした時、ふたりの間にあった携帯が再び鳴った。
舞美ちゃんは左手で鼻を押さえながら不器用に右手で携帯をいじり出した。

「あ、またなっきぃからだ。」

その言葉にさっきの反省は吹き飛んだ。
舞美ちゃんから再び携帯を奪ってメールを見た。



本文:あの下着は舞美ちゃんにだけ特別(はぁと



nkskめ!!
・・・思わず言葉が乱暴になった。声に出なくてよかった。
興奮して呼吸が乱れた。舞美ちゃんがちょっと引いた目で私を見てる気が・・・。

やっぱり負けられない!
ひっそりと明日下着を買いに行くシュミレーションを頭の中でしてみる。
ちょっと買うのが恥ずかしいけど・・・頑張るからね、舞美ちゃん!



END