Morning glow 『朝焼けみたくない?』 朝方のメールの音に目が覚めて、なんとか睡魔と格闘して携帯を開いた。 相手は舞美ちゃんだった。 だから少しだけ目が覚めて何事かと思って、急いでメールを開いたら・・・そんな内容で。 『どうしたのきゅうに』 漢字に変換する力はさすがになくって、送信して携帯を握ったまま知らないうちに眠りかけたら、またメールが来た。 『急に見たくなって』 眠い目をこすって手を伸ばしてカーテンを少しだけ開く。 途端、やわらかい光が差し込んできて思わず目を閉じた。 朝焼けを見るには日が昇りすぎてる気がする。 『もうあかるいよ』 何とかメールを返信して、もぞもぞと顔の半分まで布団に入った時だった。 今度は着信。 相手は舞美ちゃんしかいない。 無視することもできなくて電話に出ると、テンション高めな声がした。 「おはよー。寝てた?」 「んー・・・。」 「ごめんね・・・なんかね、急に愛理と朝焼けみたくなったの。」 「う、ん・・・。」 「でね、今。愛理の家の前にいるの。」 「うん・・・。ん・・・?えっ!?」 考えるより先に体が動いて、カーテンに手をかけて開くと、携帯を握りしめてにこにこ笑って手を振ってる舞美ちゃんがいた。 「な、何してるの!?」 「何って・・・愛理と朝焼けみたくて。迎えにきたの。」 「いやいや・・・。」 もし私がメールに気づかなかったとしたら、どうするつもりだったの? 電話で起こすつもりだったんだろうか・・・。 こんな時間に急に不謹慎だと思う。普通なら。そう、普通なら。 でも相手は天然で鈍感な舞美ちゃんだ。 しかも私の愛しい人、だ。 とりあえず外に出て舞美ちゃんを部屋に連れて来た。 今から出かけたらもう朝焼けなんて見れない。それに私まだパジャマだし。 部屋に入るとカーテンが微かに開いていて、一筋の光が差し込んでいた。 舞美ちゃんがそれを見て「綺麗だね」って喜んでいる。 そういう無邪気なところは私が大好きなところで、年上なのに愛おしいと思う瞬間だった。 背中から抱きしめたら、舞美ちゃんの体がすごく冷えている事に驚いた。 「ね・・・舞美ちゃん・・・いつから外にいたの?」 「えーっとね・・・1時間くらい前、かな?」 なんで・・・そんなに・・・。 「勢いで愛理の家まで来たけど、愛理にメールするの躊躇っちゃって・・・。」 頬を両手でつかんで顔だけ振り向かせる。よく見ると、舞美ちゃんの唇が紫色になっていた。 胸の奥が痛み出して、その唇に体温を確かめるようにそっと自分の唇を重ねた。 いつもとは違う、ひんやりとした感触に体が震えた。 唇を離すと、舞美ちゃんが静かに微笑む。 私は反射的に舞美ちゃんの腕をつかんで、そのままベッドに引きずり入れた。 自分も入ると、さっきまでのぬくもりが残っていて温かい。 舞美ちゃんの冷えた体を早く温めてあげたかった。 「愛理にどうしても会いたくて・・・でも逆に迷惑かけてごめんね。」 そんなか細い声でそんな事言わないで欲しい。 迷惑だ、なんて言わないで欲しい。 そんな事思ってないんだよって言う代わりに力を一層込めて抱きしめた。 私の愛しい人はホントに目が離せなくって危なっかしい。でもそれに自分で気がつかないように鈍感で。 いつもやきもきして、だけどやっぱり愛おしいの。 早く体温が同じになればいいと、抱きしめる腕の力を緩める事はなかった。 出来るだけ触れれるところは全部触れて。 最高級の愛おしさを込めて、抱きしめ続けた。 END |
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