熱病



シャワーを終えてドライヤーで髪を乾かして鏡を見ていたらタイミングを見計らったかのように携帯が鳴った。
『今から行くね』簡潔なメッセージは予想していた通りの人物で。
立ち上がって鍵を開けるとその瞬間開かれたドアの先にはやっぱり予想通り、ももが立っていた。

「メール来てから来るの早すぎるんだけど。」
「だってドアの前まで来てメールしたから。」

当然のように部屋に入って行くももの背中を追うとすぐに始まる、行為。
いつもそうだけど何だか今日は切羽詰まってる気がして声をかけようとしたけどそれはすぐに塞がれて。
あっという間に服は脱がされ乱雑に投げ出された。

「佐紀ちゃん。」

首筋から掠れた声で呼ばれる。そのまま舐められて思わず体が動く。
そのまま舌で確かめるように舐め続けられると体の奥から込み上げるものが徐々に熱を帯び始める。
心と体って連動しているんだって思った、いつもと何か違う事を感じとって荒々しいのにとても気持ちが込もっていて。
きっと自分がいつもより感じている事をももも感じているだろう。
擦れるシーツの音とお互いの息遣いが響いてこの空間全てが熱い。

胸の先端を舌で指で触れられて体をよじるようにすると押さえつけられる。
これ以上固くならないくらいに感じているのにもっともっと欲しくて腰がもぞもぞと動き出す。
ももの舌と手が少しずつ下に降りていって腰に辿り着くと甘噛みされて近くにあるそこに触れて欲しくなる。
動く腰を押さえつけられて太ももを撫でられると体が動けない分、いつもより漏れる声。

「ももっ。」

早く、して。

体にももが乗ってきたのがわかって閉じていた目を開けると目の前にももの顔があった。
行為の最中、こんな風に顔を見合わせたのは初めてなんじゃないかと思う。
ももち結びをしていないせいなのか行為の最中のせいなのか幼くも見えたし色っぽくも見えた。
やっぱりいつもと違う気がしたけど触れるのはやめた。私達はそういう関係じゃないから。
だからももを求めた。ねだるように首に腕を回して引き寄せるとももの指が私のそこに触れた。
自分のそこがどんな風になっているかすぐにわかって恥ずかしさは欲情に変わる。
ももにしがみついて夢中になって求めて腰を振ってまだ足りなくてどうしたらいいのかわからない。
こする速度が上がって行って登りつめて行く先にあるものを何度も何度も経験してもなお、何があるのかわからないけれど。
この関係性に何があるのかだってわからないけれど。
ただただ欲しくて仕方ない。

「佐紀ちゃん。」

耳元で呼ばれた名前は今まで聞いた中で一番刹那な声色だった。



抱きしめ合ったまま乱れた息を落ち着かせるように首に回したままの腕を投げ出すと、その腕が元に戻された。
ももの表情は自分の首筋に埋もれてて見れない。
背中をとんとん、とあやすように叩くと満足げに吐かれた息。
あと何回こんな風に・・・意味のない事は考える事ではないと、でもきっと同じ事を感じているのかもしれないと。
そう思い始めてしまうのが怖かった。

切なげに呼ばれた名前はこびりつくように耳の奥から離れなかった。



END