Passion

暑くてどーしようもなくて、部屋の真ん中を陣取って寝転んだ。
動いてないのに、じわじわとにじみ出る汗。
窓開いてるのに、風なんて入ってこないじゃん・・・。

あー、もうやだ。

外からは、子供達の楽しそうな声。
そっか、夏休みだ。
どうりで、平日の昼なのに、賑やかなはず。



--ゆっくりと目を閉じれば、世界はあっという間に音の世界へ。

ボールを蹴る鈍い音が聞こえる。
時々、笑い声も聞こえる。

ん?窓を叩く音がする・・・?



ガバっと起き上がって、窓の方に視線を。
その間、たった1秒。
だけど、誰もいない。
少しだけ入ってきた風が、ほんの微かにカーテンを揺らしている。それだけ。

なーんだ・・・。

気のせい気のせい。

再び寝転がる。
気持ちが張り詰めたせいか、それともただ暑いだけなのか。
再びじわりと汗がにじみでる。

ああ、シャワー浴びたばっかりなのに。
あ、プール行きたいな。
浮き輪でただぷかぷか浮いてるの。きもちよさそー。



目を閉じて、脳内に浮かんできたのは、浮き輪でぷかぷか浮かんでる自分の姿。
ああ、けっこうバカっぽいな、なんて思ってたら、その浮き輪に手が伸びてきた。

何すんだよぉ。

その手の主は、あいつだった。
もう、邪魔しないでよって睨んだら、楽しそうに笑って言った。

「たん、お腹減った。」

はぁ?何言ってるの、あんた。
私はお腹も減ってないし、ただこうして浮いてたいの。漂ってたいの。

もう、妄想の中にまで入ってきて、お腹減ったとかわけわかんない事言って。
出てこないでよ。勝手に出てこないで・・・。

そこでぷっつりとプールの映像が真っ暗に。


と、同時にまた、窓を叩く音がした。



ゆっくりと目を開けた。
見慣れた天井が見える。
そしてゆっくりと体を起こして、窓を見る。

そこには、プールの妄想をぶち壊したあいつが、いた。

「たん、お腹減った。」

窓越しでよく表情は見えないけど、ホントにお腹減ってるのか切ない顔してて
なんかわかんないけど、笑えてきた。

「あはは。亜弥ちゃん、お腹減ったの?」
「うん。どっか食べに行こ?」
「そだね・・・。」

そう言われると、お腹がぐぅって鳴った。
お店行ったらクーラー聞いてて涼しいかな。

「じゃあ、焼肉ね。」
「やだよ。こんな暑い日に。」

ホントに嫌そうな顔して、お腹を押さえてるあいつの姿を見てたら、おかしくなってきた。


それで、ふと気がつく。
ううん、ホントはわかってた。


会いたかったんだ。


一緒にプールでぷかぷかしたり、一緒にご飯食べたり。
暑さを感じたり、汗かいた手を握ったり。

したかったんだ・・・。



立ち上がったら、めまいみたいにクラクラした。
頭が、体が熱かった。

心はもっと、熱かった。



END