Rainy Day



しとしとと雨が降り、雨粒の音はぼつぼつと不規則に傘を叩く。
何度も聴いたこの音は昔よりもずっと、好きになった。
だって、ほら。

「愛理!」

傘から覗いた視線の先にはいつも舞美ちゃんがいるから。

◇◇◇

「今日も雨でごめんね。」

そんな事気にしなくていいのに、と何度言っただろう。
少しでも私の方に近づこうとしてくれているのか舞美ちゃんの右肩は少し濡れていた。
だけどそんな事気にする様子もなく、舞美ちゃんは最近あった出来事を楽しそうに嬉しそうに、幸せそうに話すのだ。

相合傘は雨の日にしか出来なくて、傘の中にふたり。
傘のせいでちょっとだけ籠って聞こえる声はいつもと違う音色で、聞こえるのはそんな舞美ちゃんの声と雨の音。
いつも騒がしい人の声も、足音も、雨の音でかき消され、舞美ちゃんの声だけが聞こえてくる空間が私は好きだ。
時々風が吹いて傘が揺れて、弾かれた雨粒がかかって、冷たい!って笑って。
だからね、雨の日だって私は好きなんだよ。
雨の日だっていつまでもこうして舞美ちゃんと歩いていたいって思うんだよ。

しばらく歩いて、気になったお店に入ってこれかわいいねって買い物したりして。
だけどお店を出るたびに降っている雨にちょっとだけ舞美ちゃんの顔が曇る。
私は笑って傘を開く。今度は私が傘を持つね。その言葉に曇った顔は晴れる。

そのうち傘を叩く音が小さくなってきて、傘を少し傾けて見えなかった空を見るとホンの少しだけ青空が見えた。
雨止むかなぁって心配そうに空を見つめる舞美ちゃんの横顔はしっとりと綺麗でこんな表情見れるのはきっと雨のおかげなんだ。

再び歩き出すと次第に雨の音は消えて、濡れた地面がきらきらと光り出す。
傘を閉じるとさっきまで灰色だった空はうっすらと青く、眩しいくらいの太陽が顔を出していた。
晴れたぁ!って嬉しそうにちょっとだけ走り出して、くるりと振り返って私を見る舞美ちゃんの笑顔はきらきらと輝く。

雨の日も晴れの日も。しっとりとした表情もきらきらの笑顔も。どっちも好きなんだよ。
こうして舞美ちゃんといれる事が好きなんだよ。
だからいつまでもこうしてふたりでどこまでも歩いて行こう。
きらきらと光る道を、ふたりで手を繋いで。ずっと。



END